子供の頃からパンが大好きだった。
でも、小学生の頃に給食の時に食べたパンは、どこか味気なく、少し塩辛いマーガリンと一緒に牛乳で流し込んだ思い出がある。
僕らの世代は、給食のパンに対してみんな同じようなイメージを持っているのかも知れない。
なぜお米の国であるはずの日本の小学校の給食に毎日毎日パンが出るんだろうと、子供心に思っていたが、その答えが大人になって分かった時、パンと同じ味気なさを覚えたものだ。
先日、ラジオの取材で、ベーカリーイノベーション研究所(BILJ)の代表、田中康之さんの話をお伺いする機会があった。
BILJは、花から採取した酵母を純粋培養する研究を重ねて、その花酵母を用いたパン作りを広めている会社だ。
実際に花酵母で作ったパンを何種類も食べさせてもらったけど、今までに食べたパンとは違う甘味と優しさを感じるパンだ。
時には、自分の抱いていた常識さえも覆すようなパンもある。
例えば、ベーグル 。
ベーグルといえば、ニューヨークに住んでいた頃に、街中のスタンドで買って食べていたお馴染みのパン。
何ともパン生地の密度が濃いというか、実に噛みごたえたっぷりというか、ちょっと古いベーグル はパサパサ感まで加わって、こちらはマーガリンではなくクリームチーズと一緒にCokeで流し込んだものだ。
そんなイメージしかなかったベーグル も、花酵母を使ったベーグル はフワフワ感としっとり感を持ち合わせた食感の、とても美味しいパンだった。
酵母を採取した花の種類によって、パンの味も違ってくるらしい。
日本には各都道府県に県花があるように、その地方地方に根付き、愛されている花がある。
その地域によって、ご当地の花酵母から作られたパンを食べる。
埼玉県川口市の1110 CAFE/Berkeryでは杏、岐阜県飛騨市の自家焙煎珈琲&ブレッドあすなろではマーガレット、同じく岐阜県大垣市のパンカフェみわではヒマワリ。
もしかしたら、家族が好きな花とか、自分の家の庭に咲く花から採取した酵母で作ったパンだって食べられるようになるかも知れない。
とても夢のある話だ。
あの味気ない給食のパンとは正反対のパンの世界。
少しずつだけど、そういう世界が広がっていくことを願う。
美味しいパンは他にも沢山あるかも知れないけど、パン酵母で作ったパンを是非一度味わってみて欲しい。
https://www.bakeryinnovation-lab.com

