「今日はゲストの方がいらっしゃるんですよね。」
Oさんが呟く。。
「もし良かったら、今日は僕の船をお貸ししますよ。ヤンマー製の漁船ですが。。それしか、今日海に出る術はないでしょう。」
致し方なく、、、いや、ありがたくOさんのオファーを快諾した僕は、冷房の効いたサロンで待つみんなの元へ。。
「え〜、、業務連絡です。本日は、エンジン不良により出船することが出来なくなりました。。」
「。。。」
「そのかわり、、Oさんの漁船をお借りすることになりました。Oさんが隣の隣の漁港から船をこのマリーナまで持って来てくれるみたいなので、もうしばらく待ちましょう。」
と、、最悪の事態は脱した感じに。。
「せっかくなので、時間も少しあるから、弁当でも食べますか。」
と、キラキラと光る大海原を横目にみんなでお弁当を広げる。。
前夜祭で結構飲んだけど、みんなお腹が空いていたみたいで、弁当がやたらと美味い。。
みんな元気になったところで、Oさん到着。
荷物を積み替えて、今度こそいざ出船。。
沖に向けエンジンの回転数を上げていく。。
順調順調。。
意外と風も強くないし。。
こりゃ、このまま大島まで行っちゃおうか。。
と、思いきや、この日の僕は手に触れるものすべてが問題を起こすのか、、、
いざ近場で中深場の餌となるサバを釣ろうと仕掛けを降ろすと、、
今度は、電動リールが巻き上がらない。。
なんで??
そういえば、エンジン不良が発覚した時点で、僕の携帯までおかしくなってブラックアウト。。
気が付けば、勝手にソフトウェア更新してるし。。
それで10分以上もOさんと電話がつながらず。。
全く、、、今日はどうかしてるぜ。。
さて、なんとか動く電動リールでみんながサバをそこそこ釣ったところで、水深200メートル以上の中深場に向かい沖へと船を走らせる。。
と、、その途端に風が強まり、波も結構高くなる。。
230メートルのポイントで仕掛けを降ろすも、、強い横波に船が翻弄される状態に我慢できず、中深場は断念。。
ましてや、中深場の大型リールの巻き上げも、途中で動かなくなる。。
100メートル以上、手動で巻きあげるのは大変だし、こりゃ何かオカシイと、、たまらずOさんに電話。。
すると、、「今、隣にいますよ。」
いつの間にかフライングブリッジ付きのプレジャーボートの助手席に乗ったOさんがこっちの船に近づいてきた。。
「今、遠くから見てたら「あれ、O丸じゃね?」って思って、、近づこうとしたら、携帯が鳴ったので。。すごい偶然。。」
そこそこ波がある中で、プレジャーボートからO丸に乗り移るOさん。。
すごいね。。海の男は。。
もう、これ以上焼けるのは無理でしょ、っていうくらい全身潮焼けしているOさん。
コックピットを見てもらったら、バッテリーのチャージがうまくいっていなかったので、電動リールの巻き上げの電気を供給できていなかったとのこと。
直してもらって、その後はすべての電動リール、ウィンウィンと音を立てて絶好調に。。
その後は、風がどんどん強くなる中、たまらず浅瀬へ移動。。
僕は操船しながら自分でも仕掛けを降ろして釣りを楽しむ。。
この頃には、ずいぶんと漁船の操船にも慣れてきた。。
楽しいな。。漁船って。。
釣りするためのだけの艤装が沢山あって、、特製の生け簀とか、、僕も欲しい、と思うものばかり。。
結局、予定よりも少し早めに沖上がり。。
夜には、BBQで釣った魚を美味しくいただく。
夏の忘れ物を探す旅で、結局忘れ物は見つかったのか??
その答えは、明白だ。。
僕が忘れていたものは、海の上の安全第一。
きっと、朝のうちのあの波の状況で予定通り船を出せていたとすれば、僕たちは調子に乗って伊豆大島まで行っていたかも知れない。
そして、行けたはいいが、もしかしたら強くなる波風に帰港する術を失っていたかも知れない。。
ましてや、誰もいない大海原で、エンジンの調子が悪くなり、自走する術さえも奪われて、漂流していたかもしれない。
マリーナの港内を漂流するのとはえらい違いだ。。
そんなことになっていれば、予定されていたミキシングもマスタリングも出来なければ、ひいては10月10日のニューアルバムのリリースでさえも夢物語になっていたかも。。
そう、僕たちは、、いや、僕は改めて忘れかけていた海の怖さ、安全の大切さを思い出すことができたのかも。。
神様はきっとそういうことを言いたかったのかな。。
いずれにしても、、みんな無事に戻ってこれてよかった、よかった。。
楽しい夏休み最後の大冒険でした。
お疲れ様。。。
また、、行こう。。
今度は、バッチリと整備された船で。
写真は、釣ったサバの針を外すの図。
