加藤ヒロ 公式サイト

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2019.03.23

高級フレンチ「ひらまつ」にて。

先月の僕の誕生日、東京は広尾にある「ひらまつ」という高級フレンチレストランを訪れた。

昔であれば、仕事の接待で高級レストランに行くことは決して珍しいことではなかったが、仕事の第一線を退いてからはめっきりその回数も減ってしまった。

まあ、この日は人生で一度しかない50歳の誕生日。美味しいフレンチとワインでお祝いする事くらい許されるであろう。

当日の料理には、ひらまつの2代目シェフが広島のご出身だということもあり、広島の食材が沢山使われていた。僕が広島出身であることを告げると、この3月に広島の食材をメインに使用した広島フェアのようなお食事会があるので是非よろしければ、というお誘いを受けた。

で、先日、そのお食事会に行ってきた。

このような高級レストランに2ヶ月続けて行くことは、いささか気がひけるものが無いわけではないが、去年の豪雨災害の復興支援も兼ねているという趣旨にも賛同して出席してみることに。行くと決めた以上、ここぞとばかり、いつもよりもたっぷりとお腹を空かして行くことにした。

さて、当日お店に到着すると正面玄関の扉の向こうに背広をバチっと決めた方が。。。湯崎広島県知事だ。

来客する一人一人に頭を下げて、ご挨拶をしているではないか。僕もお店の方を通じて知事に紹介される。でも、何と言っていいか分からないので、「こんちには、加藤ヒロです。」と聞こえないような声で呟くのが精一杯だった。まあ、知事としても、僕の声が聞こえていたとしても「誰だ?加藤ヒロって?」という感じであろう。

テーブルに案内され、着席。見ると、僕の右斜め3メートル先に、湯崎知事が背をむけてテーブルについている。

そして、知事のご挨拶と乾杯で食事会は定刻にスタート。湯崎知事は、多くの生産者の方が昨年の豪雨災害で廃業まで考えざるを得ない状況にあったが、力を合わせて何とか復興の道を歩んでいることを説明されていた。

その廃業危機に追い込まれながら色んな人の尽力もあって酒蔵を続けることになったという東広島は安芸津にある柄(つか)酒造さんの於多福純米大吟醸 初しぼり復興1号仕込みで乾杯。とてもフルーティーな味わい。いくらでも飲めてしまいそう。

お料理は、広島の生産者の方が心を込めて作ったトマト、グリーンアスパラガス、パセリ、柑橘類といった食材を使って、目でも舌でも大変楽しむことができた。

その中でも僕のお気に入りは、三次市の三良坂フロマージュさんのリコッタチーズ。誕生日の時も美味しいと思ったけど、改めて頂くとチーズの柔らかなとろみと優しい香りが心地よく、とてもワインに合う。これは是非皆さんにもお試し頂きたい絶品だ。

そして、もう一つのお勧めがメインの比婆牛。比婆は、比婆山一帯でそのむかし目撃情報が多数寄せられた未確認生物「ヒバゴン」で一躍有名になった(少なくとも僕たちの間では)場所。広島県の北東部にあって、昔は比婆郡として存在したが、今は合併して庄原市となっている。

比婆牛は、日本和牛4大ルーツの一つである岩倉蔓を起源とし、庄原産の素牛を地元で飼育した牛を比婆牛ブランドとして認定された和牛肉をいう。この歳になると脂っぽい肉は胃にもたれがちだが、比婆牛は無駄な脂肪が少なく繊細なサシが入って上品な味わいが特徴だそうで、確かにペロリと平らげてしまった。

食事会が始まった頃、まだ全体的にぎこちない空気が漂っていたが、少しずつ賑やかな会話と共に和やかな空気へと変化していった。最後の方では、マダムの方が違うテーブルの知らないお客さんにも声をかけていた。温泉旅館の浴衣に例えると、決して他人に不快な思いをさせることのない範囲で、全員が平等に帯を緩め、前を適度に乱しているくらいの和んだ雰囲気だった。

その中でも、知事だけは最後まで帯の緩みと浴衣の乱れは一切なかった。そう、知事はお酒が入っても威厳と品格を保つ必要があるのだ。それを見ていて、「僕は、、知事はなれないな」と心の中で思った。いや、そうでなくてもなれないけど。

この日、広島の関係者の方は、知事を含め3名来席されていた。湯崎知事と広島県事務所長、そしてレストランにイチゴを納めている農家の方。

農家の方は、スーツにネクタイ姿で、僕の左斜め前の丸テーブルにこちら向きに座り、氷点下になればイチゴは枯れてしまうとか、いかにイチゴの栽培が難しいか、そして農業自体が利益を上げるのがとても大変なビジネスである、ということに熱弁していた。

その声は、料理とワインが進んで、その方の額の色が、まるで熟した綺麗なイチゴの色のように赤らんでいくにつれて、周りに響くようにどんどん大きくなっていった。

そして、メインの肉料理が終わり、デザートが出てくる頃には、その額からは赤みが少し引いていて、最初の頃の適度な声のボリュームにまで戻っていた。

食事会の終わりに、そのイチゴ農家の方のご挨拶があった。その方、なんと呉の建設会社の方で、数年前に社内ベンチャーとしてイチゴ栽培事業を始めたんだとか。

僕はてっきり、祖父の代から三代続くイチゴ農家の方が、普段は着ることのないスーツに身を包み、広島から東京は広尾にある「ひらまつ」まで来られて、こりゃ一世一代の大仕事だ、とばかりにテーブルで熱弁をふるわれていたのかと勝手に思い込んでいたが、どうやら違ったらしい。

でも、イチゴ愛はそれに匹敵するくらいの情熱を感じた。もちろん、残留農薬がゼロだという農家の方が当日持参されたイチゴは絶品だった。

最後のデザートまで、もう入らないっていうくらいお料理もワインもたっぷりと堪能してお開きに。

ああ、、もう当分は高級フレンチはお預けだな。満足満足。
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