知的で、創造的で、自由な世界。。
就寝するとき、人によって直ぐに寝れる人と、中々寝付けない人がいる。
もちろん、日によって違いはあるのだろうけども、直ぐに寝れるタイプの人は、ほぼ毎日例外なく秒速で寝ることができるという話を聞いたことがある。
若い頃は、そんな人が羨ましかった。
というのも、僕の場合、寝るときに頭の中で色んなことを考え始めると、もしかしたら明け方近くまで起きていたのではないか、というくらい眠れない日が多かった。
実は寝ている時間が一番脳をフル稼働させているのではないか、と思うくらいだ。
思い返せば、その前兆は幼少時代からあったように思う。
子供の頃は、将来のことを案じたり、難しいことを考えるなんてことはないので、寝床について寝るまでの間に僕は楽しい妄想の世界に浸ることにしていた。
多かれ少なかれ、大抵の人は元来妄想癖なるものが備わっているのではないかと思う。
僕がその眠りにつく前に見ていた妄想の世界の舞台は、どこかの中世のヨーロッパの街。
街の北側中央部に大きなお城があって、そのお城の背後にはマッターホルンのような高い山がそびえ立っていた。
そして、お城の南側には街を南北に貫く一本の石畳の道路がまっすぐに伸びていて、そこには、たくさんの人、自動車、馬の往来があった。
そんな街の片隅にあるリキュールを売るお店で僕は子供ながらに働いていた。
何故だかわからないが、数名の学校のクラスメートもその街に暮らしていた。
そんな妄想がそのまま眠りの世界にまで入り込んできて、その中世のヨーロッパの街を舞台にした夢を見ることもあった。
3日続けて、同じシチュエーションの夢を見ることもあった。
そんな幼少時代の経験があるからなのか、僕にとって寝る時間は休む時間ではなく「考える時間」であり「妄想する時間」だった。
その妄想の夢の世界では、普通では考えられないことも出来たし、また何をやっても許された。
背中に生えた翼で空を飛べたし、乗っていた飛行機が墜落したことは何度もある。
拳銃で撃たれたこともあるし、人食い猫に首元をピチャピチャと舐められたことだってあった。
禁煙を始めた頃には、久しぶりのタバコを手にしながら、肺の奥まで思い切り煙を吸い込んでは意志の弱さに落胆した。
その世界は、ある意味究極の自由があり、厳格なルールに束縛されることもなければ、倫理的な理性さえも求められることもない。
まさに誰しもが憧れる「夢の世界」であり、バーチャルリアリティの「究極の自由の世界」でもあるのだ。
それがある時を境に、僕は横になったら秒速で寝てしまうタイプに変わってしまった。
覚えている限りでは、ちょうど35〜36際の頃に会社を共同で設立した頃だ。
人生の中で誰よりも働き、仕事に全力を捧げた頃だ。
日中は止まることなく動き回り、分単位の会議が続いた。
タバコを吸っている時間だけが唯一の休憩時間だった。
そんな生活に身体も心も休息を求めていたんだろうと思う。
それ以来、僕は就寝の際し難しいことを考えることもなく、また、妄想にふけることもないままそのまま眠りに落ちるようになった。
なんとなく夢を見る機会も子供の時よりも減ってきた気もする。
先日のZIP-FMのラジオ番組で、自分の好きなもの、ハマっている事などを紹介する企画がスタートした。
その企画の初回放送で僕が紹介したのは、スマートウォッチだ。
もともとは、携帯電話ではなくいつも身につけることができる万歩計が欲しくて購入したもの。
つい最近始めたばかりだが、それによりとても興味深いデータと向き合うことになった。
それは睡眠に関するデータだ。
個人差はあるらしいが、通常のサイクルとしては眠りについて浅い睡眠から深い睡眠へと移行し、そして浅い睡眠に戻ってからレム睡眠へと移行するらしい。
研究によれば、人はこのレム睡眠のときに夢を見ることが分かっている。
一般的に成人のレム睡眠は、全体睡眠時間の20%程度で、新生児だと約50%がレム睡眠らしい。
成長するにしたがってレム睡眠の比率は下がっていくようだ。
スマートウォッチで計測した睡眠データを見ると、僕の場合レム睡眠は全体の15%を下回っている。
なるほど、、データが示す通り、僕は「究極の自由の世界」から少し遠ざかっているみたいだ。。
残念。。
もし、自分に与えられた時間を、①現実の世界、②レム睡眠の世界、③深い眠りの世界、に自分の意思で自由に振り分けることができるとすれば、、どうだろう。。
痛みや苦痛を伴う現実の世界か、自由な夢の世界か、記憶も何も残らない無の世界か。。。
インターネットで調べていて、こんな記事を目にした。
レム睡眠の時間は、人間にとって最も知的で洞察力に富み、創造的で自由になれる時間。
起きているのは、食べる、子孫を残す、天敵と戦うといった生存に必要な務めを果たすため。
もしかしたら、人はレム睡眠のために生きているのかも知れない、、と。。。
この現実の世界は修行の世界だという人もいるけど、、なんか考えさせられるなあ。