初めての舞台。。
体育館ほど広くはない。
でも木の板が規則的に並んだフローリングの床は、まさしく小中学校時代の体育館を思い出させる。
僕にとっては初めての舞台稽古。
稽古で一番遅れをとっている僕のために、今回の舞台の主役であり自ら演出も手がける南翔太君が、時間を割いて僕が登場するシーンの練習を何度も何度も繰り返す。
翔太君は僕よりずっと年下だけど、その昔ウルトラマンの主役をやっていただけのことはあって、何度か観に行かせてもらった彼の舞台では、いつも芝居への情熱の熱量の高さにに関心させられてしまう。
特に、大地真央さん主演の舞台「夫婦漫才」で長男役を演じた翔太君を明治座の客席から見たときは、まさに雲の上の人であり、スターだった。
「うん、そう。加藤さん、いい感じですね。」と翔太君は優しく褒めてくれながら、立ち位置はこういう感じの方がいいとか、姿勢はこうした方がいいとか、色々と指導してくれる。
まだ台詞を完璧に覚えられていないので、流れるような進行には程遠いけど、、なるほど雰囲気は掴むことはできた。
それにしても、この僕が舞台に出るようになるとはね。。何でだろ。
音楽をやっていることでさえ驚きなのに。
もう自分の人生で何が起きても驚かないや。
数年後、「まさか僕がNASAに入って宇宙飛行士になるとはね。。」とか、「まさか僕がオリンピックに出るとはね。。」とか、言っているかもしれない。
いや、、幾ら何でもそれだけは絶対にないけど。。
数日後。
二度目の舞台稽古でも、僕のシーンを中心に何度もリハーサルを繰り返す。
僕も台詞をやっと覚えて、少しは上手く演じられているんじゃないかと、ちょっとだけ色気が出てくる。
そして、いよいよ最初から最後まで通しのリハーサル。
一応台本は最初から最後まで読んでいたけど、、全体のストーリーを改めて演技を通じて観てみると、自分が登場するシーンの重要性とか、台詞の持つ意味とか、色んなことがわかる。
そこで、また色気が出る。
もっと上手く演じてやろう、、と。
その翌日。。
全体の合同リハ。
当日の全体の流れの確認が終わると、舞台本編のリハーサルを通しで行う。
そして、いよいよ僕のシーン。
台詞は覚えたし、全体のストーリーの中での僕の役割もようやく理解できた。
その上での演技だから、今までの稽古の時よりもきっと上手くできるはず。
そう思って演じてみる。
舞台後、監督からお呼び出し。
「前回の稽古の時は良かったんだけどさ、、なんか変えた?」
「・・・(色気を出しました。。)← 心の中で呟く。。」
「なんていうか、、あまり演じないようにした方がいいんだよね。あと、台詞ももっと自然な感じでいいから。」
あ、、、、色気が余計な演技になって出てしまったらしい。。。
下手のことやんない方がいいってことか。。
役者って、、難しいなあ。。。
そして、僕は本番を迎える。。。
ライブ中に歌詞が飛んだ時の誤魔化し方は随分と上手くなったけど、、舞台で台詞が飛んだ時、、、、果たして、、どうすればいいんだろう??
どうなることやら。