加藤ヒロ 公式サイト

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2020.10.22

夏が終わり、秋が来ても。。。

ちょうど2年前の10月のこと。

当時、僕がパーソナリティーを務めていた東京FMのラジオ番組に、シンガーソングライターの秦基博さんがゲストとして出演くれた。

ちょうど「花」というタイトルのアナログ盤シングルのリリースが決まったということもあり、そのプロモーションを兼ねての出演だった。

元々、秦さんは僕がギターを始めるきっかけとなった方でもあり、僕が自分で曲を書くようになったのも秦さんの影響だった。

まさかそんな憧れの人と本当にお会いすることが出来るのかと、その話が決まってからずっと胸の高まりを抑える日々を過ごしていた。

当日の秦さんは、朝から晩までラジオを中心に生でのメディア出演が目白押しで、移動中の渋滞も重なり、僕の番組収録には予定よりも少し遅れての到着となった。

「初めまして。秦基博です。」

やばい。本物だ。聞きたいことは山ほどあったけど、いざご本人を前にすると中々上手く聞くことが出来ない。

それでも、台本に沿って色んなお話をさせて頂いた。

僕が個人的に一番聞きたかったことは、インディーズ時代に秦さんが壁にぶち当たっていた時期に、それをどう乗り越えたのか、ということ。

秦さんは「自分ではいいと思って書いた曲をライブハウスで歌っても、思ったような反応が全然なくて。。それがずっと続くと、もう先が見えないような状況にもなったことがあった。」と話していた。

そんな時、「とにかく曲を書いたんです。書いて書いて、それでダメならまた書いて。そんな日々を繰り返していたら、ある日、事務所(オーガスタ)の方に声をかけられていました。」と。。。

なるほど。。。そうか!

曲を書いて書いて書きまくるんだな。。

その日以来、僕も曲を精力的に書くことにした。

と、言っても秦さんのようなペースで曲を書ける訳もなく、当時はまだ2ヶ月に1曲少しだけまともな曲が書ける程度の話。

そんな僕が、今年は新型コロナの自粛生活もあってか、ソコソコのペースで曲を書いてきた。

もちろん、そこそこ自分でもいいと思える曲もあれば、どうひっくり返しても駄作にしかならないシロモノもある。

どちらかと言えば、このシロモノの駄作の方が数的には圧倒的に多い。

そんな日々を送る中で、この夏に「渋谷行進曲」という映画の主題歌を書くというチャンスを頂いた。

期限は2週間。

映画の主題歌なので、全く自分の趣味嗜好で書く訳にはいかない。

ちゃんとテーマがあるのだ。

以前にウェブCMのテーマソングを書かせて頂いたことはあるが、それよりも難易度は数段上だ。

何と言っても、映画館のスクリーンにエンドロールと一緒に流れる曲なのだ。

その2週間、僕は苦悶の日々を送った。

書いてはダメ。書いてはダメの繰り返し。

与えられたテーマを複雑に解釈することしか出来ず、頭は混乱し、出口の見えない袋小路のような日々。

やっとの思いでプロデューサーに聴いてもらえる候補曲を2曲書いたが、自分でもダメだろうと分かるレベルの曲にしかならない。

当然、ダメ出し。

だめだ、、もう時間がない。。

これまでか、と諦めかけたその日の午後、僕はふと映画「蒲田行進曲」(1982年/監督・深作欣二)をプライムビデオで観ることを思いつく。

松坂慶子さんが着ていた赤いドレスの色が鮮烈に目に焼き付いた。

その夕方、普段は歩かない道を1時間半も散歩した。

途中、道路脇の花壇に咲く花々の姿が印象に残った。

翌日の朝、普段はやらないのに、起きたままの姿でPCの画面を開くと半分無意識のうちに徐に歌詞を落ち込んだ。

一人の女性の愛を、赤い薔薇と白いユリに例えるような詩だった。

その日、朝から車でいつものように篭り場へと向かう。

ところが、どうしても気が乗らず篭り場に行こうとしない自分がいた。

そして、朝からずっと神宮前から渋谷辺りを車でウロウロしていた。

その日も朝から灼熱の太陽が降り注ぐ、とても夏らしいよく晴れた空だった。

運転している間、最近は車で聴く機会が随分と減った秦さんの曲を流していた。

信号待ちをしていた時、とある一曲のメロディーに耳が留まる。

やけにその曲のコード進行感に共感を覚えた。

ヒントを得た僕は、急いで篭り場へと向かう。

秦さんの曲が耳に残る中、ギターを手に取り自分なりのコード進行を書き変えていく。

そのコード進行を、その日の朝に書いたばかりの詩に当てはめてみる。

すると、、出来た。。

こうして生まれた「赤い薔薇」という楽曲。

こうも簡単に曲というのは出来上がってしまうものなのか、と自分でも信じられなかった。

プロデューサーに送ると、すぐに返事が来た。

いい曲だ、と。

こうして、この曲が正式に映画の主題歌として採用されることが決まった。



あれから。。。夏が終わり、秋がやってきた。

あれ以来、曲を書く気にならない。

どうやら、今年の楽曲制作のエネルギーをあの曲に全部使い果してしまったようだ。

それでも、何とか気を持ち直して曲を書いてみる。

今日、久しぶりに書いた曲。

うーん。。

これは、、、どう見てもシロモノの”駄作”ですわ!
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