村上春樹の「レキシントンの幽霊」という短編小説を読んだ。
ネタバレになるので詳細は書かないが、ストーリーとしては題名にある通り、彼がマサシューセッツ州ケンブリッジ郊外にある友人宅で過ごした一夜の出来事について綴った物語だ。
その小説を読み終えて数週間がたった頃の話。
その日、疲れていた僕はいつもより早く床に就いた。
僕の寝床は一階にある。
布団に潜り込み(僕はベッドよりも、昔ながらの布団で寝る方が好きだから布団で寝ている)、そっと目を閉じる。
いつもなら直ぐに訪れる眠りが、その日は中々訪れない。。
何度か寝返りをうつ。。
だめだ、、眠れない。
僕は35歳を境に、布団に入ってからすぐに寝ることが誰よりも得意になったはずなのに。
しばらくして、眠れない理由に気付く。
二階から聞こえてくる物音がうるさいのだ。
いや、その物音が物理的な騒音のように聞こえる訳ではない。
もっと言えば、その物音自体が、本当に二階から聞こえているかの確信さえも持てない。
でも、確かに誰かが二階で、、そう、、まるで子供がはしゃいでステップを踏んているような、そんな足音がずっと鳴っているのだ。
寝床で30分くらい経った頃、我慢できなくなり僕は二階へと様子を見に行った。
ところが、そこには誰もいない。
当たり前だ。
「うるさいんだけど!」
一言だけ言い残し、また一階に降りて布団に潜り込んだ。
不思議なことに、二階から聞こえていた足音はピタリと止んだ。
それから、間も無くして僕は深い眠りに落ちた。
一体、あの物音は何だったのか。。
春が近づく満月の夜に、たまたま僕の家の二階で誰かが宴でも開いていたというのか。
それとも、本当に座敷童でも現れたのか。。
不思議な夜の話。
幽霊なのか座敷童なのか分からないけど、不思議な夜はレキシントンだけではないようだ。
