加藤ヒロ 公式サイト

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2019.07.30

祝!甲子園出場!

ちょうど七夕の7月7日のZIP-FMのラジオのオンエアで、「短冊に願い事を書くとすれば何?」というオープニングトークで、「夜中にラーメンを食べても太りませんように。」というハルキのどうリアクションしていいか分からない願い事に対して、僕の願い事は「母校が甲子園に行けますように!」という切実なものだった。

その願いに応えるかのように、母校の監督と選手が一丸となって県予選を戦い抜き、ついに15年ぶりの夏の甲子園の切符を手に入れた。

選手も頑張ったけど、母校OBでもある監督の荒谷先生にとっては、周囲からの重圧を背負っての戦いだったはず。特に春の県大会で優勝して夏の県予選は第一シードだっただけに、期待度は日に日に高まっていただろう。

その意味でも、本当に大変だったと思う。そんな重圧を跳ね除けて、監督就任からわずか1年での古豪復活劇に、荒谷監督が一番ホッと胸を撫で下していることだろう。

荒谷監督は、僕よりも8つほど年下で、僕が初めてお会いしたのはもうずいぶん昔のことだ。まだ、荒谷先生が野球部の監督になるずっとずっと前で、恐らく僕もまだ本格的に音楽を始めていなかったんじゃないかな。。。とある日、母校でずっと教員をやっている僕の旧友と広島で飲んだ際に、荒谷先生も一緒に夜食事をしたのが最初だったと記憶している。

ちょうど今年の3月に大阪で開かれた母校の同窓会でも、僕は荒谷監督の隣だった。色々と大変な思いをされている話も聞いた。伝統校の野球部の監督という立場が如何に難しいかという話も聞いていた。その5ヶ月後に、その時に話していた甲子園への思いが叶ったことが、僕は本当に嬉しく思う。

改めて、荒谷監督と選手の皆さん、おめでとう!という気持ちだ。

甲子園は全国の代表校が集まる場所だから、一つ勝つということがとても難しいことだとは思うけど、悔いのないよう全力でベストを尽くしてほしいと思う。

僕も時間が合えば甲子園に駆けつけるよ。


ところで、その同窓会の若手中心の二次会にて。。。僕は一次会と同じように荒谷監督の隣に座っていた。

そして、結構お酒も進んでの帰り際。

「ヒロさん、今度野球部の応援歌を作ってくださいよ。」

「おお、応援歌ね。任しておいてください!」

なんて会話、、したような気が。。。

うーん、、まずい、、これはまずい。

荒谷監督は、甲子園出場の約束を果たしてくれたけど、、僕の方は、、応援歌を作るという約束を果たしていないではないか。。。

荒谷監督が、、そのことを酔っ払って覚えていないことを、、今は祈ろう。。
2019.07.27

青春のスプラッシュ!

時刻は17時45分。

僕は東京ドームの41番ゲートに上る階段の近くでKB君を待つ。

関東は、正式な梅雨明け宣言こそ出ていないが、紀伊半島に近づきつつある熱帯低気圧から吹き込む熱風のせいか、東京都心を覆う空気は完全に蒸し暑い夏の空気へと変わった。

風が吹けばまだ凌げるが、ジッとしてると汗がダラダラと頭皮を伝って首筋へと流れていくのがわかる。

すぐ隣にある後楽園ホールの非常階段の踊り場では、試合前のボクサーがパンパンと音を立ててミット打ちをしている。

そのミット打ちの音に合わせて、僕の頭皮から汗が噴き出す。

「ああ、もう早く中に入ってビール飲みたい・・・。」と心で叫んだ瞬間にKB君が姿を見せる。

今日はいつもと違って、三塁側の2階席での観戦。あるお方から頂いた今日のチケットでいつものKB君を誘っての観戦。

座席に到着すると、ちょうど通路に面した一番前の席。

そして、僕の席は一番端っこなので、すぐ左側には2階席を縦に移動する階段通路がある。

とにかく前も横も人の往来のすごいこと。

階段を上り下りする人の荷物が僕の左肘掛に設置されたカップホルダーにあるビールに当たってひっくり返りゃしないか、心配しながらの観戦。

試合開始とともに、僕とKB君は売店で買ったお気に入りの崎陽軒のおつまみ弁当を膝に置き、早速通りがかったビールの売り子のお姉さんにビール二つを注文。

相変わらず、東京ドームの売り子さん達はみんな若い女の子ばかりだ。

売り子のユニフォームに身を包み、汗ビッショリになりながら、重いビールタンクを背負い階段を走って上り下りする彼女達のあの体力には頭が上がらない。

世のおじさん達は、そんな彼女達の一生懸命な姿に心を打たれ、気に入った売り子さんを見つけて、その娘からしかビールを買わないと決める人も多い。

ビールを売る彼女達も結構商売上手で、ビールを注ぐ間におじさん達とのコミュニケーションを積極的に図ることで仲良くなって、、いや、仲良くなった気にさせといて、追加注文をちゃっかり稼ぐ売り子さんも多いのまた事実。

この日、最初に注文した売り子さんも、「どちらのファンなんですか?」とか「よくいらっしゃるんですか?」とか、僕たちに話しかけてきてくれる。

感じの良い娘だ。

ところで、試合が始まってしばらくは、試合の展開にかかわらず、そんな会話を楽しみながら、迫力あるドームの雰囲気に身を委ね、そしてお弁当にビールを飲みほす、ということだけで僕は一旦幸せなご機嫌になるのだ。

そして、だいたいいつも東京ドームでは試合が進むに従って阪神が劣勢になり、後半は焼けビールを煽る展開になるのが落ちである。

でも、この日は違った。

勝負どころの7回表、この日初登場した新外国人助っ人、ソラーテが勝負を決める一発をレフトスタンドに放つ。

僕の周りに阪神ファンは大はしゃぎ。

先日、プロデューサーの安藤さんとお知り合いのミュージシャン仲間で行った甲子園で、一切盛り上がることなく敗戦を喫した一戦ではあり得なかった光景。

そんな盛り上がりの最中、ちょうど階段通路を下から駆け上がってきたビールの売り子の女の子が、僕の目の前にある一番上の段に足を引っ掛けてド派手に転倒。。。

しかも、片手にビールカップを持っていたのか、水飛沫ならぬビール飛沫をあげての大転倒。

全身をビールまみれにしてうずくまる彼女を目に、僕たちは一瞬何が起きたのか理解するのに数秒かかる。。

「大丈夫?怪我はない?」と聞くと、「怪我は大丈夫です!ビール、かかってないですか?」と気丈に振る舞う彼女。

なんと、一番最初にビールを買った女の子ではないですか。。

顔は半分泣きそう。。

そりゃそうだな、、ソラーテのホームランに匹敵するくらい僕の周りの観客の視線を一気に集めてしまったのだから、彼女にしてみれば恥ずかしいだろうし、往来する観客は渋滞を捲き起こしてるし。。。

すぐにKB君がスタッフを呼んできて、大量のペーパータオルでビールまみれになった床をその売り子の女の子と二人で拭いている。

スタッフの女性も、「大丈夫ですか?ビールかかってないですか?」と僕に聞いてくれたけど、本当に僕にビールがかからなかったのが不思議なくらいド派手なこけ方だった。


ビールの販売終了間際、気を取り直して頑張る彼女を見かけてビールを注文する。

「ありがとうございます。これ、慰めの注文ですよね。。」と、彼女。

相当、、凹んでるな。

「いや、お情けなんかじゃない。さっきの転け方は見事だったよ。恥ずかしかったと思うけど、堂々としていればいい。」

「そう言って頂けると、少しは救われます。。」

「そう、ビールの飛沫も素晴らしかった。あれは、そう、、あれこそが青春のスプラッシュだよ!」

青春のスプラッシュ??

もう僕も酔っ払って、、何言ってるかわかんないし。。


それにしても、、スラーテはファンに声援に応える仕草とか、ラテン系のノリもあって楽しかった。最後は踊ってたし。。マルテもソラーテみたいにマルーテって名前にすれば、もう少し打てるようになるんじゃないの?っていうくらい、ソラーテはカッコよかったよ。

ああ、楽しかった。

2019.07.24

蝶の夢

夢を見た。

鮮明で、とても色鮮やかな蝶が出てきた夢だ。

舞台は、とある部屋の中。

僕の部屋ではないが、どうやら僕はそこで寝泊まりをしているらしい。

ごく普通の、、ひと昔前の典型的な日本の木造モルタル造りの家だ。

目を覚ました僕は、布団から起き上がる。

見ると部屋の中に布団の中から出てきたのか、、鮮やかなエメラルドグリーンの羽でひらひらと蝶が舞っている。

とても大きな蝶。

羽の両端まで20㎝くらいはある。

窓も開いていないはずなのに、僕はその大きな蝶が外に逃げないように追いかけて捕まえようとする。

でも、壁なのか窓なのか、、どこかに吸い込まれるようにその蝶はいなくなってしまう。

残念そうに振り返ると、今度は同じくらいの大きさの赤い蝶が空中を舞っている。

赤といっても、どこか燻んだ感じだけども、、とても鮮やかな色合いの赤だ。。

逃げようとするその蝶に、僕はここにとまってとばかりに手を差し出す。

すると赤い蝶はその数本ある足を僕の指にモゾモゾと掴まろうとする。

その時、僕は夢の中で蝶の足が指に触れる感触を確かに記憶する。

蝶は、僕の指が落ち着かないのか、すぐにまた空中をひらひらを舞い始める。

赤い蝶は、エメラルドグリーンの蝶と同じようにどこかに消えてしまう。

すると、今度は黄色に黒いラインが入った蝶がまた布団のあたりから飛んでくる。

阪神タイガースみたいな色の組み合わせだけど、何故かその時に阪神タイガースだとは思わなかった。

その黄色い蝶が消えると、最後にもう一匹蝶が現れる。

でも、残念ながら最後の蝶の色を思い出すことができない。

艶やかな緑色だったような気もするし、、、他の色だったかも知れない。。

夢に出てくる蝶に、、どんな意味があるんだろう。。

そして、色鮮やかな蝶はどこに消えていったんだろう。。

色のある夢をはっきりと見たのは、これが二度目だ。

最初は学生時代。

6畳一間の学生アパートの部屋で、夕方近くになってうたた寝をした時のこと。

僕はどこかの南の島にいて、目の前に広がるとても鮮烈な海と空の青が脳裏からしばらく離れなかった。。

あの夢も、一体何かの意味を持っていたのか。。。

それにしても、、リアルな蝶だったなあ。。
2019.07.22

そうだ!竜宮城へ行こう!

ドイツから帰国して、名古屋と東京でのライブのリハーサルやらラジオ収録やら、その他諸々の所用もあり、そしてとある事情で最終の新幹線に乗れずに予定外に名古屋で一泊したりと、とにかくバタバタと忙しい日が続いた。

おかげで時差ボケにもならず「良かった良かった」とタカを括っていたら、名古屋でのライブが終わったあたりから、遅ればせながらに時差ボケで朝起きれなくなってしまった。

いや、厳密に言えば時差ボケだけではなく、毎日続くどんよりとした梅雨空がもたらす気圧の変化についていけず、カラッと晴れ渡るドレスデンの青空とのギャップもあってか完全に気が滅入ってしまい、やや気象病っぽい頭痛の症状まで出てきてしまっていた。

今は帰国して2週間以上が過ぎ、漸く本格的に時差ボケも取れた感じだが、そんなボケボケの状況で収録した時のラジオ番組のオンエアーがあった。

このオンエアーでは、番組企画で制作したマンスリーソングを披露する日。

基本的に今回はハルキが作った曲をベースに1番の歌詞をハルキが、そして2番の歌詞を僕が書いた。

二人だけで演奏するより皆んなでやった方がいいという事で、カホンにBrian the Sunのドラムの駿汰、そしてエレキギターにプロデューサーであり事務所の社長である安藤さんが加わった。

ラジオ収録の2日前に大阪のスタジオに集合し、まだ完全に完成していない曲を仕上げながら練習を繰り返す。

すると、そのうちに少しづつ形になってくる。

スタジオの時間が許す限り最後まで特訓は続き、あとは「各自でちゃんと練習して本番に備えるように!」と社長から指示が出て解散。

その2日後の収録当日。

僕は早めにZIP-FMのスタジオのあるビルに到着し、いつものようにスタバに寄りお決まりのソファーでホットコーヒーを飲む。

するとハルキと駿汰もやってきて合流し、一緒にコーヒーを飲む。

「安藤さん来ないね。。。」と、思いながらも、もう集合時間だからと3人でスタジオのあるビルの上層階へ。

スタジオに着いてみると、打ち合わせスペースに誰よりも早く来て、秋山純監督から借りてきたという買ったばかりのエレキギターのムスタングを手に、一生懸命練習する安藤さんの姿が。。。

そうか、、ちゃんと練習してる。。有言実行だ。。。そして誰よりもこの収録に賭ける思いが強いのがよく分かる。。

で、迎えた本番。。。何度か演奏してみて、2、3回目くらいに一応オンエアーに耐えられるクオリティーの音源は確保。

でも、安藤さんはまだ納得いってないみたいだ。。。

全てのトークをエンディングまで収録して、残り時間で泣きのもう一回。これで、、一応、安藤さんも納得した模様。

そしてオンエアー。。。いい感じじゃない?この曲!演奏も!

タイトルは、、、「そうだ!竜宮城へ行こう!」

何で竜宮城かって?話せば長いから、また今度。。。

是非、radikoのタイムフリーで!(東海地区以外の方はプレミアム会員じゃないと聴けませんが。。)


2019.07.19

Live@原宿クロコダイル

久しぶりの原宿クロコダイル。

そして、クロコダイルでは初めてのバンド編成。

昔のブログを遡ってみてみたら、3年前の6月10日にクロコダイルでのイベントに出演させてもらったのが最初。

そう、あれは3年前。。あれ、、もうずっと昔のような気がするけど、、まだ、3年前なんだ。。

その時のライブは僕にとってちょっとした転機になったライブだったので、今でもよく覚えている。

当時は、音楽活動を本格化して間も無く、まだまだライブ経験も不足していて、なかなか自分の力をステージで出しきれない日々が続いていた頃。

そこで、初めての老舗ライブハウスのクロコダイルに出演という事もあって、結構ライブ前の1週間はセットリストを早めに決めてガムシャラに何度も何度も個人リハしたのを覚えている。

その頃はまだ会社の仕事にソコソコ時間を割いていた事もあって、せいぜいライブの2-3日前にちょろっと練習する感じでライブに出ていたから、あんなにライブ前に練習したのは初めての事だったかも知れない。

本番当日、緊張しながらも練習の時と同じくらい自分を出す事が出来た手応えがあった。

初めての感覚だった。

もちろん、絶対的な完成度は全然低かったんだろうと思うけど、ギターと歌の師匠にも「とても良かった」とお褒めのお言葉を頂いて喜んだ。

その時のライブが、その後の自分にとって大きな自信になったと同時に、ライブ前に納得するまで練習することの大切さを学んだ経験でもあった。


そんな思い入れのあるクロコダイルで、少しは成長した自分をバンド編成という形で見てもらいたくて、忙しい中いつものバンドメンバーに集まってもらった。

昨日は、色んな意味で自分としては反省点も多いステージだったけど、それでもその時に出来ることを精一杯やろうと最後の曲まで頑張れたことは自分でも良かったと思う。

いつも万全な状態で調子よく歌えればそれに越したことは無いんだろうけど、プロスポーツの世界でもよく言われるように、本当の力は調子が悪い時にどう粘り、期待される結果を出すのか、というものが問われていくとすれば、今は色んな経験を積ませてもらっていると思って頑張るしかない。

もちろん、ちゃんと体調とか含めて自己管理が必要なんだけど。

と、いうことで、次回ライブはいよいよ8月24日(土)、25日(日)に開催されるクラシック・ミニ・フェスティバル@富士スピードウェイでのフェス。

僕は24日(土)の夜、今回のクロコダイルでのメンバーにサックスの寺地美穂さんを加えて、フルフルメンバーのバンド編成で臨みます。

こんなメンバーで出来るのも中々無いチャンスなので、思い切り夏の夜を楽しんでこよう。

さあ、来るべき梅雨明けと本格的な夏の到来に備えて、、、今のうちに、、ちょっと休んでおこう。。。

photo by 森良太(Brian the Sun)
2019.07.15

ザクセンの風〜その5〜 最終章

あっという間にドレスデン滞在の最終日の朝を迎える。

この日は朝から曇り空。

気温も最低気温が15度を下回っていつもより少し低い。

それでも、滞在した5日間ずっと雨に降られなかったのは、とても幸運だった。

パンと手作りハムにサラミ、ゆで卵にコーヒーというシンプルだけどとても美味しい朝食。

僕のお気に入りは、パンとハム。いくらでも食べれそう。

朝食の後、僕は一人でいつもの森へと出かける。

滞在中でこの森の中に入るのは4回目だ。


最初は義弟に案内されて、ぐるりと30分くらい散策した。

そのときは、自分たちがどこを歩いているのかが全く分からなかった。

2回目は、僕一人で森に入った。

前日と同じように、クラインガルテンの脇の道を歩いてから森の中へと入っていく。

森の中の道は、微妙に曲がりくねっていて、僕のように土地勘のない人間が迂闊に入り込むと、迷宮のような森から出てこれなくなるんじゃないかと心配になる。

そんな時は、Wi-Fiが繋がっていなくても自分がどこにいるのかがわかるグーグル・マップのオフライン・マップがとても役に立つ。

それでも、人があまり歩いていない薄暗い森の中では、時折カサカサと音を立てる野生動物や聞いたことのない野鳥の鳴き声、そして風に揺れる木々の枝の音が絶えず僕の心を緊張させる。

森は僕という遠い極東の小さな島国から来た他所者を受け入れるかどうか品定めしているのかも知れない。

くねくねと曲がる森の道を歩いていると、うっすらと汗が滲んでくる。

僕は森の真ん中あたりにある木のベンチを見つけ、そこに腰掛ける。

背負っていたミニギターを取り出し、弾いてみることにした。

発声練習をして、歌を歌う。

僕の声に気づいた散策中の人は立ち止まり少しこちらを伺うようにするが、歌声はすぐに木々の茂みに吸収され、立ち止まった人も何もなかったかのように再びその歩を進め始める。

1時間くらいベンチで過ごした後、最初に散策した時と同じ道のりを辿り、足早に家へと戻る。

そして、3回目は2回目の道のりを逆方向から辿ってみた。

逆方向から辿ることで、森の中に張り巡らされた散策道の位置関係が随分と分かってくる。

違う方向から物事を見ることはとても大事なことだ。

この日は、少し森の奥深い所まで続いている初めて歩く遠回りの道を辿ってみた。

ぐるりと森を一周するように散策して、家から少し離れた場所にある森の出口に出る。

森の出口付近には立派なテニスクラブがあり、綺麗に整備された赤土のテニスコートではまだ幼い子供から大人までがテニスを楽しんでいる。

この日を境に、僕と森との距離は随分と縮まり、僕の心から森に対する警戒心も恐怖心も消え、むしろ親しみのような感覚を抱いていた。


最終日の朝、僕はミニギターを背負い、テニスコート方面から森へと入る。

これがドレスデン最後の森の散策だ。

森の中にちょっとしたコンサートができるステージがあると聞いて、そこを目指して歩き始める。

森に入り、少し迷いながらも10分もすると森の中のステージが見えてきた。

ステージに上がって歌でも歌おうかと思ったけど、周辺に散歩している子供連れの親子が数組いたので、躊躇してやめた。

そう、僕は小心者なのだ。

ステージをあとにして、今度は森の一番深い場所に向かって歩き出す。

敢えて初めての道を森の奥へと進んでいく。

ずんずんと足早に、、そして一定の速度でテンポよく進んでいく。

すると、森の中を流れる小川に出た。

土手を下りて小川の向こう岸へと渡ってみる。

向こう岸の土手を登った所にある木のベンチで一休み。

すると、動物の気配。。。

みると、遊歩道で散歩中のスタンダード・プードルが立ち止まり、ベンチに腰掛けている僕の様子を伺っている。

10秒ほど立ち止まって危険がないと察知したのが、足早に僕の目の前を通り過ぎていく。

その10秒後に一人の若い女性が僕を見てにっこりしながら目の前を通り過ぎる。

スタンダード・プードルの飼い主だろう。

曇り空だった空は、雲の切れ間から太陽の光が森の中に木漏れ日となって降り注ぐ。

もう、僕の中に最初の時に感じていた緊張感はない。

森もどうやら日本から来た僕のことを少しは受け入れてくれたようだ。

僕は再び歩き始める。

そして、2回目に来たときに歌を歌ったベンチまでたどり着いて、この日もギターを弾いて歌を歌う。

辺りは木々のざわめきと野鳥の鳴き声しか聞こえない静寂、、そして少しひんやりとした空気が僕を包んでいる。

歌を歌い終わり、僕は森を覆う木々の枝を見上げる。

その向こうに青い空が広がっている。

ザクセンの風がこの森を吹き抜ける度に、木々の枝はざわめき声を上げ僕に降り注ぐ柔らかな太陽の光を揺らしている。

今日の夕方、ドレスデンともさよならだ。

そして、この森ともさよならだ。

多分無いと思うけど、、またこの森に来ることがあればよろしく、と挨拶して僕は森を出る。

「今度来るときは、森のステージで歌ってみるよ。」

このようにして、僕のドレスデンの旅は終わる。


日本に帰ってきてから1週間以上が経ったけど、、今までも目を閉じれば心の中に、、あの森の匂い、木々のざわめき、野鳥の鳴き声、そして吹き抜けるザクセンの風を感じることができる。

これからも、いつでも、いつまでも、ずっと。

終わり。。。











2019.07.14

ザクセンの風〜その4〜

「山はないの。」

ドレスデンに行く前に、行きたい場所があるかと聞かれ、尋ねた時に返ってきた返事。

着陸態勢に入った飛行機の窓から見下ろした景色にも、山らしきものは一切目に入らず、土地の高低差と言えばせいぜい田園風景の中にある緩やかな丘陵くらいだ。

という訳で、山々の絶景ポイントを見に行くというイベントを最初から期待していなかった僕なのだが、現地に行ってからザクセンのスイスと呼ばれる、その名も「ザクセン・スイス国立公園」という絶景ポイントがあるとのことで連れて行ってもうことにした。

場所はドレスデンから車で南東方向に走ること約50分。もうチェコとの国境にも近い場所らしい。

道中、車窓からはまるで北海道を思わせるような田園風景が広がる。

空はどこまでも青く、所々に小さな白い雲がぽっかりと浮かんでいる。

丘陵地帯は、空とトウモロコシ畑、そして小麦畑との間に長閑な地平線を描き出し、空の青と大地の緑と黄色との境目に見事な色のコントラストを表現している。

そんな風景に見とれているだけで心が癒される。

目的地はバス停。。。。いや、バスタイ(Bastei)と発音する場所。

それほど山道を登ってきた訳でもないのに、目的地に到着して少し遊歩道を歩いていくと、そこには息を飲む絶景が広がっていた。

僕らが立っている場所は、断崖絶壁の上にある展望台。

周りには奇岩と言うに相応しい、、まさにアメリカの歴代大統領の顔がどこかに彫刻されているかのような錯覚を起こしかねない岩山が取り囲んでいる。

眼下に流れるエルベ川は長い歳月をかけて岩肌を削り取るように緩やかにカーブを描いている。

そんな風景を見ながらの岩山の散策。

僕は飛行機やジェットコースターのように自分が何かに固定されていれば高い場所でも平気なのだが、吊り橋を渡る時や下が見える非常階段を降りる時ように自分がフリーの状況での高所では通常の何倍も恐怖症になってしまう。

この岩山でも僕は柵から身を乗り出して下を覗くことができない。

そんな奇岩群の中に足元が見事なアーチを描く石で出来た橋が通っている。

「バスタイブリュッケ」と言う橋で、ゼクセン・スイス最大の名所らしい。

絶景を満喫した散策の後、パーキング近くの森の中で皆んなでおにぎりをいただく。

僕は昼間からソーセージに白ビールだ。

ベンチに座っておにぎりを食べていると、人間を怖がらないのか野鳥が餌を求めて近づいてくる。

こんな大自然が作り出した絶景ポイントまであるなんて、ザクセンは本当にいいところだなあ。

スケールの違いを感じた1日でした。










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